喫煙歴のある者や喫煙者が肺癌を発症する可能性は,喫煙量(タバコの総本数)と同程度に年齢によって左右され,付き合い程度のタバコ喫煙であっても,50歳以上の年齢の喫煙では,20年間毎日
3 箱のタバコを吸い続けている50歳未満の習慣的喫煙者と同じくらいの肺癌発症リスクがあることが,New
York-Presbyterian HospitalのClaudia I Henschkeらの報告で明らかにされた.Henschkeらの研究は1993年に35施設協同の国際的研究として始まり(International
Early Lung Cancer Action Project:I-ELCAP),2万7,701人の男女について,年
1 回のスクリーニングCTを行うことで肺癌による死亡を減らせるかどうかという検討を行っている.
この研究では年 1 回のCTにより根治可能なStage Iの肺癌を高率に診断することが可能であり,Stage
I肺癌の手術後の再発による死亡率が非常に低いことが示された.6 カ月以上の治療の遅れにより腫瘍は増大し,しばしば肺癌としてのStageの進行を来す.喫煙者の肺癌の76〜78%は年
1 回のCTで治療可能であり,CTによるスクリーニングを受けなかった場合には,根治率は 5〜10%に低下してしまう.また,I-ELCAPによれば,肺癌の発症率は喫煙者の年齢や喫煙量に関係なく,喫煙を中止してから20年経っても目に見えて減少することはない(喫煙の影響が長期に残る).喫煙中止から20年を過ぎると,肺癌発症率は半分に落ちるが,それでも全く喫煙歴がない人に比べると高い.
American Cancer Societyによれば,癌による死亡は男女ともその多くを肺癌が占めており,乳癌や前立腺癌,大腸癌を合わせたよりも多くの人が肺癌で死亡している.I-ELCAPは,50〜74歳の喫煙者の肺癌発症率(1,000人中15人)は50歳未満の喫煙者の肺癌発症率(1,000人中
6 人)の 2 倍以上であることを明らかにした.また,喫煙したタバコの総本数に応じて喫煙者の肺癌発症率が上昇することも示した.毎日
3 箱のタバコを10〜20年間吸い続けた喫煙者の肺癌発症率が1,000人中16人であるのに対し,喫煙継続年数が20年以上になると1,000人中28人と,大幅に上昇するのである.ちなみに,10年間,1
日 1 箱のタバコを吸い続けた喫煙歴をもつ喫煙者の肺癌発症率は1,000人中 6 人であるのに対し,10〜15年間では1,000人中
7 人で,1 日 1 箱の場合には,肺癌発症率と喫煙年数はあまり関連しないことが分かる.