最新号目次
Vol.10-No.4, 2008(2008年11月発行号)
Top Story
塞栓術のいま
欧米における塞栓物質の臨床応用と先進的技術
血管塞栓から分子標的治療まで:拡大し続ける塞栓術の適応と可能性
理想的な球状塞栓物質の条件
Department of Radiology, University of Minnesota, Minneapolis, Minnesota, USA
Jafar Golzarian
日本は経カテーテル動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization:TAE)の研究成果で世界をリードする評価を得てきたにもかかわらず,その基盤材料となる塞栓物質の薬事承認が遅れたために,これらを用いた先端的な研究領域では欧米の後塵を拝する形となっている.それでもIVR医たちの持続的な努力と熱意が実を結び,今秋,厚生労働省も血管塞栓用ビーズを早期導入検討品目として挙げ,申請企業の公募に踏み切っている.また,脳動静脈奇形(arteriovenous malformation:AVM)に対する血管塞栓物質としてのOnyx[Onyx液体塞栓システムLD(ev3社製)]についても承認作業が進められており,新規塞栓物質の臨床利用への大きな一歩が踏み出された.今後は徐々に門戸が広がることが予想される各種塞栓物質の臨床試験の結果や薬事承認の動向を注意深く見守りつつ,国際的なIVR学会の技術展示やハンズ・オン,ワークショップ等において,欧米で先行利用されている各種塞栓物質に触れ,的確な適用のためのテクニックや知識を養うことが,日本のIVR医にとって大切になる.ここでは米国の塞栓術研究のキーマンであり,国際シンポジウムGEST(Global Embolization Symposium and Technologies)の創設者でもあるJafar Golzarian(Minnesota大学)が,欧米で承認されている塞栓物質のラインナップとその特性についてISIR(International Symposium on Interventional Radiology & New Vascular Imaging,2008 年 5 月14〜17日,軽井沢開催)とGEST(2008 年 6 月 5〜8 日,Barcelona開催)で行った 2 口演を再構成して紹介する.
日本における塞栓術・塞栓物質の最新動向
球状塞栓物質SAPにかける期待
より効果的かつ安全な治療へ
ゲートタワーIGTクリニック
川内 利夫
堀 信一
はじめに
経カテーテル動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization:TAE)は,本邦において切除不能肝癌の治療法として発展してきた技術で,現在では肝癌以外にも子宮筋腫や出血性病変などに対して有用性が認められている.画像診断の進歩とともに小さな肝細胞癌(hepatocellular carcinoma:HCC)も発見できるようになり,根治的治療として担癌区域の超選択的なTAEが行われることもある.この技術が発展した背景として,海外ではほとんど設置されていないIVR-CT(Fig. 1)の普及が進んでいることも要因の 1 つと考えられる.
GEST 2008 Special Report
Outline
「全身のあらゆる塞栓術」に関する「世界規模」の教育プログラムを提供
Master Class, ハンズ・オンを併設した第 2 回GESTはプログラムも充実
大阪大学大学院医学系研究科 放射線医学講座
大須賀慶悟
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はじめに
2008年 6 月 5〜8 日の 4 日間,前年に続いてスペイン・Barcelonaで第 2 回Global Embolization Symposiumand Technologies (略称GEST,ゲストと読みます)が開催されました.会場は,世界的なサッカー強豪チームのFCBarcelonaの本拠地として有名なカンプ・ノウ(CampNou)・スタジアムの目と鼻の先にあるPrincesa Sofi a Hotelで,サッカーファンの方には格別の場所だったかもしれません.私は,本シンポジウムの発足当初から学術委員としてプログラムの企画・立案にかかわってきました.第 2 回からは日本IVR学会(The Japanese Society of Interventional Radiology:JSIR)国際担当理事のお一人である国立がんセンター中央病院の荒井保明部長にも学術委員に加わっていただきました.GESTはまだ日本での知名度は低いと思いますので,日本人学術委員を代表して,GEST発足の経緯から今回の概要を日本の医師・研究者の方々にご報告したいと思います.
Session Report
1. radioembolization・血流改変術
90Y,肝動注カテーテル留置テクニックを駆使しHCC治療法として普及へ
国立がんセンター中央病院 放射線診断部
高橋 正秀
はじめに
ここでレポートするOncology 1 は 1 日目(2008年 6 月 5 日)の午後に設けられた 1 時間半のセッションで,Northwestern大学Robert H. Lurie総合癌センター腫瘍IVRセクションのトップを務めるRiad Salem准教授をモデレータとして行われ,8 演題のうち最初の 5 演題がradioembolizationに関するものでした.後の 3 演題のうち 2 演題は本邦から,まず筆者による肝切除術前の門脈塞栓術,次いで筆者の施設の荒井保明部長による肝動注カテーテル留置テクニックと続き,最後の 1 演題は,Iowa大学放射線科IVRグループ(GESTを立ち上げた 3 人衆の 1 人であるJafar Golzarian教授の前任地)のShiliang Sunによる,腎癌四肢骨転移の切除術前経カテーテル動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization:TAE)でした.radioembolizationは,欧米でも施行施設が限られているためか,参加者の数は思ったほど多くありませんでしたが,GEST全体での平均的な会場占拠率と比べて特に少ないということもなかったようです.
2. HCCに対するTACE:方法・適応・成績・評価の検討
腫瘍虚血か新しいドラッグデリバリーシステムか
奈良県立医科大学 放射線医学教室
田中 利洋
はじめに
今回,GEST 2008で発表する機会をいただき本学会に参加したので,Oncology 3: Transarterial Chemoembolization(TACE)における私の発表内容を紹介し,同セッションの口演の概要を報告する.
3. 消化管出血・静脈瘤治療としての塞栓術
診断と治療におけるヒントとコツ
大阪市立大学大学院医学研究科 放射線医学教室
西田 典史
はじめに
GEST 2008で新たにプログラムに取り入れられた“TopTips”は,GESTのInternational Facultyにテーマを割り振ってIVRの技術についての“top tips (最重要事項,コツ)”を説き明かしてもらおうという試みである.10人の著名なIVR医が各テーマのセッションに分かれて,自身の経験やこれまでの報告に基づき,よりよい治療のための「コツ」を 1 つ 1 つ,ポイントのみを押さえ,分かりやすく,かつ具体的に伝授している.筆者が発表を行った開催 3日目(6 月 7 日)のSession 12,GI / Visceralでは,米国・Washington大学のMichael Darcyが「消化管出血に対する塞栓術を行う際のヒントとコツ」を供覧した.このセッションではほかに消化管出血治療としての塞栓手技やイメージングに関して 3 口演,胃静脈瘤の治療としてのB-RTO(balloon-occluded retrograde transvenous obliteration:バルーン閉鎖下逆行性経静脈的塞栓術)に関して 2 口演,部分脾動脈塞栓術に関して 1 口演の計 7 口演が行われた.ここでは各口演の要旨を簡潔に紹介する..
Side Line
ECR 2008 Highlighted Session
DSCT / DECTの臨床的意義
さらに進化するCT—DECTは機能診断に発展する
藤田保健衛生大学医療科学部 放射線学科
辻岡 勝美
はじめに
2008年も例年通り欧州放射線学会(European Congress of Radiology:ECR)がAustria Center Viennaで開催された.ECRといえば従来は臨床系の発表が主体で,機器開発・技術開発に関する研究発表は少ないという印象の学会であったが,最近ではそれらに関する演題も多くなっている.北米放射線学会(Radiological Society of North America:RSNA)のような放射線技術学も含めた学会を目指す,という学会全体の意向の表れであろう.そして,その流れは学会が企画するシンポジウムにも見ることができる.
EUSOBI 2008
遠隔放射線診断,CAD,USPIO-MRI等,乳腺画像診断の多彩な最新知見を提示
評価高まる乳腺MRI
秋田大学医学部 放射線科
石山 公一
はじめに
欧州放射線学会(European Congress of Radiology:ECR)に参加されたことがあってもEUSOBI(European Society of Breast Imaging)のことはご存じない方がほとんどだと思う.EUSOBIの年次学術集会は毎年ECR初日の前日(2008年は 3 月 6 日)に同じ会場(Austria Center Vienna)で行われる.ECR初日には人,人,人で満員電車のようにごった返す会場がまだ閑散としており,嵐の前の静けさといった感じである.会場設営準備があちこちで行われていて,EUSOBI参加者以外で見掛けるのは準備に奔走するスタッフたちのみ,そんな雰囲気の会場の一室でEUSOBIは行われる.
SIR 2008
血管内治療から再生医療まで—進化するIVR—
ナビゲーションシステム,塞栓物質に話題集中
東海大学医学部 基盤診療学系画像診断学
小泉 淳
はじめに
Seattleで開催されたSIR 2007に比べると 2 週間遅れての開催となったSIR 2008はWashington, DCが舞台であった.前回同様の寒さを危惧してロングコートを準備してきたが,13時間の長距離フライトを経て着いた当日のWashington, DCは東京以上に暖かく,時差呆け予防のために散歩するように努めた.White HouseからWashington記念塔(Washington Monument)界隈にかけては半袖姿の人々も多く見かけたほどで,「地球温暖化もここまできたか」と驚嘆するも,暖かいのは単なる偶然だったようで,翌日以降,会期中は予想通りロングコートが必要な寒さが続き,妙に安心してしまった.
CARS 2008
CADに関する話題—注目の論文から日本の最新研究まで—
好評博したCAD vs 読影医デモなど,企画洗練
名古屋大学医学部 保健学科 放射線技術科学専攻
小寺 吉衞
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はじめに
国際コンピュータ支援放射線医学・外科学会議(Computer Assisted Radiology and Surgery:CARS)はいくつかの団体(学会・ワークショップ)による合同国際会議で,毎年Berlinとその他(London,Paris,Chicago,San Francisco,東京,大阪など)の都市で順番に開催されている.今年は初めてスペインのBarcelonaで開催された.BarcelonaはAntonio Gaudiのサグラダ・ファミリア聖堂(Sagrada Familia)で有名であるが,そのほかにも街中に世界遺産が溢れ観光都市としても魅力的な街である.
Educational & Social Study
Tips and Knowledge for Refreshers
よりよい英語論文作成のための実践的アドバイス
編集者・査読者の基準を意識した論文の作成が採択へと繋がる
Editor Emeritus of American Journal of Roentgenology (AJR)
Robert J Stanley
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SIR 2008 2008年 4 月 4〜6 日に日本医学放射線学会(Japan Radiological Society:JRS)総会がパシフィコ横浜にて行われた際,AJRのEditor-in-Chiefであった(在任期間:2003年 7 月〜2008年 6 月)Robert JStanleyが“How to accept of manuscript for AJR”という特別講演を行った.これはAJRの雑誌としての性格やオンライン査読システムに則った論文採択までの流れ,ペーパーレスの経済効果等を解説する講演であったが,Stanleyは最後に「来日の記念として日本の研究者たちのために」と前置きし,AJRでの論文審査の経験を踏まえ,英語が不得手と言われがちな日本人の研究者たちのために国際的な医学誌に採択される英語論文作成に必要な心得を示した.以下はその内容を新たに原稿として書き起こしたものである.
Series
Radiology Update
第 3 回日本分子イメージング学会総会・学術集会
PET,蛍光ツール,MRIによる研究進む
新しい造影剤・癌治療薬等の創薬プロセスに資する分子イメージング
はじめに
日本分子イメージング学会の第 3 回総会・学術集会が,さる 5 月22,23日の両日,遠藤啓吾会長(群馬大学)のもとで大宮ソニックシティにおいて開催された. 国内の研究機関や企業の分子イメージングに対する関心の高まりに加え,官公庁が分子イメージング関連のプロジェクトを発表するなどの機運から,2006年に画像医学,医用工学,薬学分野の研究者らが中心となって結成した日本分子イメージング学会は,その設立総会ならびに第 1 回学術集会[藤林靖久会長(福井大学)]を,5 月に京都市(京都大学百周年時計台記念館)において開催した.今回は2007年 6 月の福井市(フェニックスプラザ)における第 2 回の開催に次いで 3 回目の開催である.
海外医療の現場から
Brigham and Women’s 病院での後期専門医研修
— 2 つのフェローシップを経験して—
女性IVR医に恵まれた環境を整備
Angiography and Interventional Radiology, Department of Radiology, Brigham and Women’s Hospital, Harvard Medical School
鈴木ありさ
はじめに
MRIガイド下集束超音波療法(MR-guided focused ultrasound surgery:MRgFUS)を学ぶという目的で米国 Massachusetts州 Boston 市に来てから,はや 3 年が経ちました.最初の 2 年間をBrigham and Women’s病院のImage Guided Therapyのクリニカルフェロー,次の 1 年をIVR部門のクリニカルフェローとして過ごし,2008年度から同部門の指導医となりました.当初の予定を越えてBostonにとどまることとなったのは,自身にとっても大変な驚きであります.日本で民間病院および大学病院のレジデントとして過ごしてきた経験をもとに,後期専門医研修(フェローシップ)に重点を置いてレポートをさせていただきます.